4-4.融資

NO IMAGE

4-4.融資

本内容は2018年9月時点の情報をもとに書かれています。
現在と異なっている場合がございますので、予めご了承ください。

不動産投資向けの融資の種類

不動産を買う際に使えるローンは3種類あります。

1:住宅ローン
2:パッケージ型融資(アパートローン)
3:事業性融資(プロパーローン)

住宅ローンは投資用不動産を買うためのローンではなく、購入した本人が住むためのマンションや一戸建てを購入するためのローンです。

他人に貸す目的で不動産を購入する際に住宅ローンを利用することは、住宅ローンの規約で禁止されています。その代わり、用途が限定されていることで、金利は一番低い水準になっていることがほとんどです。

なので、アパートやマンションなどの集合住宅を一棟丸ごと購入するためには利用できません。

投資用不動産を買うためにはパッケージ型融資(アパートローン)か、事業性融資(プロパーローン)を利用することになります。

・パッケージ型融資(アパートローン)
不動産投資を行おうとしている個人向けに用意されたもので、融資金額、金利、融資期間などの基準があらかじめ決まっている融資です。

返済原資は確実に入ってくる給与所得からの返済を想定しており、審査は申込者の属性(年収、勤務先、年齢など)を基準に行われます。借り入れできる金額は年収の何倍までという基準があるケースが多く、基準さえ満たせば比較的容易に融資を受けることができます。

見方を変えると、

「購入しようとしている物件の良し悪しに関係なく、購入しようとしている人の属性が高ければ融資をする」

ということです。

不動産会社の主催するセミナーに参加して
担当者と購入する物件について
相談することがあるかと思います。

その時に

「あなたの年収だとこれぐらいの規模の物件を買えます」

と言われることがあります。

それは、その不動産会社が

「売ろうとしている物件」

「いつも取引している金融機関」

「パッケージ型融資(アパートローン)を利用して」

あなたが買えるかどうかをコメントしているだけです。

『この物件を購入してあなたが目標を達成できるか』

という視点のアドバイスではないことが
ほとんどだと思われますので、注意が必要です。

パッケージ型融資(アパートローン)を使うメリットは

融資の基準が明確なので

「融資を受けられるか」

を瞬時に判断できることです。

買付をすぐに入れられますし
審査期間が短く決済までの期間も短いので
短期間で購入できます。

・事業性融資(プロパーローン)
事業の運転資金や設備投資のための事業者向け融資です。不動産投資を事業とみなして、案件毎に融資額・金利・期間などの条件が決まります。個人、法人どちらでも利用でき、事業計画、自己資金、担保評価・今までの取引状況等をふまえて総合的に判断されます。

すべては金融機関との交渉次第です。融資額や融資期間について柔軟性のある対応を期待できる場合もあります。その代わり、審査期間が長くなる傾向があります。

金融機関は保証会社の保証を利用せず、独自で貸付先の信用度を見極め、自らの判断と責任に基づいて貸し出しますので、連帯保証人が原則必要となります。

パッケージ型融資と事業性融資の比較

項目パッケージ型融資事業性融資
対象個人(個人で設立する資産管理法人含む)事業者(個人・法人問わず)
内容既成オーダーメイド
金利比較的高い(1.5~4.5%以上)比較的低い(1.0~3.0%)
審査機関短い長い
融資期間長期短期~中期
限度額低い(年収の2~30倍)高い
借りやすさやさしい難しい

パッケージ型融資(アパートローン)は、融資は受けやすいものの、家賃収入が返済原資としてみなされないため、融資限度額は年収によって制限されてしまいます。脱サラや早期リタイアを目指して、年1,000万円程度のキャッシュフロー獲得を目標にする場合は、5億円程度の投資規模が必要になるため、事業性融資(プロパーローン)の利用がほぼ必須になります。

基本的に、最初は個人の属性で借入ができるパッケージ型融資で進めることになりますが、ゆくゆくは事業性融資を受けられるように取り組んでいきましょう。

具体的には、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)を見て
・収益が回っているのかどうか
・自己資本比率
・債務超過になっていないか
・事業が5年後、10年後にどうなっていくか
などが評価の対象になります。

金融機関の種類と特徴

金融機関には種類があります。
それぞれ特徴が異なりますので、
まずは全体像をおさえておきましょう。

政府系金融機関:

不動産投資で活用できるのは
①商工組合中央金庫(商工中金)
②日本政策金融公庫(公庫)
の2つです。

①商工中金は初心者にはハードルが高く、ある程度の規模がある法人でなければ利用が難しいです。

②公庫は利用しやすい金融機関のひとつです。不動産投資に融資するというよりは、不動産賃貸業を開業することに対して融資をしてくれます。

公庫を使う主なメリットは以下です。

・日本全国、耐用年数切れでも融資してくれる。
・低金利かつ固定なので、金利上昇リスクがない
・500万円以下の小規模の融資にも積極的
・途中で売却してもペナルティがない

一方、デメリットとしては
・融資期間が短いため(10~15年程度)、高利回りでないとキャッシュフローが出ない
・融資額の上限は4800万円

ただし、女性・20代・55歳以上の方は、返済期間や融資額の上限が優遇されます。

都市銀行:

低金利で日本全国が融資対象ですが、物件の規模は数千万円から数億円、自己資金も3割程度必要です。不動産投資の初心者には融資を検討する土俵にすら上がれず、なおかつよほどの高属性でないと相手にされません。
その中でも不動産投資に対して比較的前向きなのが

・三井住友銀行
・りそな銀行

地主や金融資産が豊富な資産家に対してのみ融資を行うのが

・みずほ銀行
・三菱UFJ銀行

です。

不動産投資の実績が積み上がってきて、規模を拡大するタイミングになってはじめて検討する金融機関になります。

地方銀行(地銀)・第二地方銀行(第二地銀):

地域密着型のため、自宅や物件の所在地がエリアになければ融資をしてくれません。「地域の発展のために融資する」という大義名分があるため、現地で法人の設立を求められることもあります。
一般的に、地銀は大きな会社の事業用資金
第二地銀は、個人の生活費や個人事業に対する
少額の資金に対応するという住み分けです。

数百万円から数千万円でも融資をしてくれ、自己資金も1~2割程度ですので、使いやすい金融機関と言えます。

不動産投資に積極的に融資をしていると言われているのは
「スルガ銀行」と「静岡銀行」です。

不動産投資専用のローンを用意しているため非常に利用しやすいのですが、その代わりに金利が高く設定されています。

信用金庫:

信用金庫も地域密着型のため、自宅や物件の所在地がエリアになければ融資をしてくれません。
物件の積算価値や、耐用年数にこだわらないこともあるので、築古で土地の価値が高い物件や、収益性は高いけれど積算価格が低い物件の購入に際して利用価値が高いです。

ノンバンク系:

預金業務を行わず、貸付だけを行う金融機関を指します。
借りやすいのが特徴ですが、金利が高めになります。
・築年数が古い物件
・担保評価が出づらい物件
・属性が低い

など、銀行では融資が受けられない場合でも
融資を受けられる場合があります。

ただ、見方によっては
物件に収益性や担保力がないことを
個人の信用で補っているとも取れます。

収益性の良くない物件を
ノンバンクを使って購入すると
その後の規模の拡大に
悪影響を与える可能性もあります。

ですので、

ノンバンクで融資を受けられるからといって
安易に購入しないよう注意が必要です。

同じ金融機関でも支店によって
融資姿勢は大きく異なる

まず、支店長によって大きく融資姿勢が異なり、担当者レベルでも変わります。
ここでお伝えしているのはあくまでも”傾向”です。
最終的にはアプローチしてみないと分かりません。

投資対象に応じた融資の基本戦略

・低利回り築浅RC
地元の地方銀行や信用金庫で低利・長期の融資を受ける

・高利回り築古物件
1:ノンバンク系で高利・長期で融資を受ける
→数年後、借り換えや金利交渉で金利を下げる

2:日本政策金融公庫で融資を受け、半年後に信用金庫で長期に借り換える。

次に、融資の観点から個人と法人の違いを解説します。

1:個人で融資を受ける場合

給与など、個人の所得に対する返済比率を見られます。

そして、銀行間の信用情報機関に融資額が開示されます。
個人債務の大きい投資家は警戒されます。

どんなに属性が良くても借入総額が3億円程度で
融資が受けられなくなる可能性があります。

2:法人で融資を受ける場合

法人を設立し、自ら法人の連帯保証人になる
という形式を取ります。

あくまでも法人への融資のため
基本的に個人の融資額は表に出ません。

やり方次第では3億円を超えて
融資を受けることができます。

また、法人は節税の選択肢が広いため
キャッシュフローを重視する場合は
メリットが大きくなります。

・目標を達成するためには、どのくらいの規模まで物件を買い進めていく必要があるのか?
・現在の個人の借入額

をふまえてどちらで融資を受けるか
検討することになります。

では、実際に投資戦略を立てるステップを解説します。

1:融資を受けられる可能性のある金融機関をピックアップする

投資戦略で決めた投資対象とリソースを見ながら
融資条件を満たす金融機関をピックアップしていきます。

ステップ1:居住地エリアが融資対象の金融機関を探す

居住地で融資を受けられる金融機関が決まります。

居住地にある金融機関を
インターネットやタウンワークを見て
リストアップします。

また、勤務先の所在地エリアも融資対象になり得るので
合わせて調べておきましょう。

ステップ2:融資の種類を確認する

金融機関によって、不動産投資で活用できるのが
パッケージ型融資(アパートローン)なのか
事業性融資(プロパーローン)なのか
が異なります。

自分が受けようとしている融資の種類によって
使える金融機関が変わってきます。

ステップ3:融資が受けられる物件か確認する

物件の種類によっても融資するかどうかが
定められています。

・RC造の1棟マンション(築30年未満/それ以上)
・一棟アパート(新築/中古/築20年以上)
・区分マンション(1000万円以上/それ未満)

など、様々な条件があります。

また、

・再建築不可
・借地権
・既存不適格

など特殊な物件の扱いについても
金融機関によって異なります。

投資対象とする物件はどの金融機関で
融資を受けられるのか確認しましょう。

ステップ4:属性が基準を満たすか確認する

賃貸経営の実績が無い最初の1回目の融資付けが
一番難しく、個人属性で左右されます。

具体的には

・年収
・自己資金

の2つで融資可能か判断されます。

個人の属性の良い人は、不動産の評価が
あまり良くなくても融資を引くことができます。

言い方を換えれば、

儲からない物件でも個人の信用で融資が引けてしまう

ということです。

ですので、年収が高く貯蓄のある方は注意が必要です。

たとえ融資が引けたとしても
それは物件が評価されたのではなく
あなたの属性が評価されただけかもしれないのです…

2:融資内容を確認する

金融機関によって

・借入期間
・金利

が変わってきます。

ここまで選別してきた金融機関の
借入期間と金利の情報を集めておきましょう。

3:金融機関の格付けを確認する

金融機関は階級社会と言われています

金融機関は、自分の所よりも下の階級で
融資を受けている人に対しては、融資をしたがりません。

トップに君臨するのが都市銀行、
次が地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合と続き
最後がノンバンクです。

そのため、一番下のノンバンクで借りると
低い金利で借りられる都市銀行やその次の
地銀などから融資を受けにくくなってしまいます。
(公庫は影響しません)

金利を下げるためにノンバンクから
地方銀行などへ借り換えようとしても難しいです。

個別相談を受けているとノンバンクで借りていて
高い金利のせいでキャッシュが残らず
次の物件も買えないと言って
行き詰まっている方は少なくありません…

もちろん、ノンバンクが必ずしも
ダメというわけではありません。

・年収などの問題で上位の金融機関が使えない
・どうしても自己資金が出せない
・融資期間が短い
・エリアの問題
・旧耐震物件
・既存不適格物件
・再建築不可物件

といったケースでは、日本政策金融公庫や
ノンバンクを選択するケースもあります。

ここでお伝えしたいのは、

戦略なしに金融機関を選択してしまうと
金利の高い返済から抜け出せず収益が圧迫し
儲からない物件を持ち続けることになる

ということです。

よく犯してしまう過ちが

今の状況で融資をしてくれる金融機関を探してしまう

ということです。

金利が高いのに、融資期間が短いのに
融資を受けられるからというだけの理由で
物件を買ってしまう方がいます。

買うことが目的になってはいけません

不動産投資をやる目的を見失い

「物件が欲しいから」
「不動産オーナーになりたいから」

という感情のままに動いてしまうと
ほぼ確実に失敗します。

「融資してほしい金融機関を先に決めて
そこで借りられるように自己資金を貯めたり
実績を作る」

くらいの心構えで取り組まなければなりません。

なるべく上位の金融機関から借りられるように

・給与収入、事業収入などを貯める
・他の資産を売却する
・金融機関以外から借りる

など、

「どうすれば自己資金を増やせるか」

というテーマに試行錯誤、創意工夫をもって
取り組むことが融資をつかみとる秘訣です。

今いる地点から考えるのではなく
ゴールから逆算する

これが戦略を立てるときのコツです。

4:コネをつくる

個人の属性が良ければ、飛び込みで行っても
相手にしてもらえるかもしれませんが
基本的には相手にされないことが多いです。

貸したお金は必ず返してもらわなければなりません。

銀行からすると、知らない人が突然やってきて
「お金を貸してください」
と言われているわけで

その人物を信用してよいのか
見極める必要があります。

また、融資を実行するにあたっては
上司や鑑定士など関係者を巻き込みます。

巻き込んだ結果、融資実行につながらなかったら
関係者に迷惑がかかり、今後の仕事が
やりにくくなってしまいます。

銀行の担当者も会社員です。

限られた時間の中で成果をあげなければなりませんし
基本的に忙しいです。

実行される可能性が低い、よくわからない案件に対して
積極的に動くわけにはいかないのです。

信頼は移動する

ある方が飛び込みで融資の相談をして断られたそうですが
そのあとに同じ金融機関に対して同じ物件の融資のご相談で
付き合いのある担当者をご紹介したところ
審査が通ったこともあります。

特に地方銀行や信用金庫の場合、
個人の属性が大切なのはもちろんなのですが
それよりも重要なことは

どこから持ち込まれた融資案件なのか

ということです。

もちろん一定のルールや基準はありますが、コネの有無によって
条件やそもそも土俵に上げてもらえるかなど、かなり影響を受けます。

「えっ、コネで融資が有利になるんですか?」

と思ったかもしれませんが、実際コネは融資に影響を与えます。

そのため、金融機関の担当者とつながりがある
不動産業者と関係を築いておくことは
有利な条件で融資を引く上でのカギとなります。

有利な条件で融資を勝ち取るコネの作り方

不動産業者のセミナーに参加したり、物件の問い合わせをするなどして営業担当者とつながる機会があったときは、次の質問をして関係を築くべき相手かを見極めましょう。

・その担当者の融資付けの実績
・会社がどの金融機関と取引をしているか(会社自体が融資を受けているか)

特に地方銀行や信用金庫から融資を受けるには
その地域に根差して誠実な仕事を行い
信用を積み重ねなければなりません。

あなたが地方の物件を検討しているのなら
地場の金融機関で融資付けの実績がある担当者を探しましょう。

もしパートナーにできれば、融資の面ではかなり有利に
物件購入を進めることができます。

賃貸経営は地場産業であることを忘れないでください

融資姿勢の変化に注意

国の政策や経済状況などによって各金融機関の融資に対する姿勢は変化します。情報は常に取りに行き、必要に応じて戦略を見直す必要があります。